インプラントとは?
インプラントとは、骨の中に純チタン製の小さなネジの様なインプラント体を埋め込み、その上に人工歯を固定する治療法です。 入れ歯やブリッジでは、歯茎より上の歯冠の部分は再現できても、歯根を再現することはできません。インプラントの治療では、歯根まで再現し、見た目と機能の両面において、元の自然な状態に近づけます。
長時間よく噛める美しい歯を手に入れる
歯は、食べ物を噛むという行為だけでなく、言葉を発したり、人間特有の顔の表現を生み出したりと、日常の生活でとても重要な役割を担っています。だからこそ、やむを得ず欠損してしまった歯を何らかの形で補う必要があります。
インプラントは、健康な歯を傷つけることなく失った歯を人工的な歯で補う治療です。人工的な歯といっても、厳密には歯そのもののみでなく、歯の根っこ(歯根)までを含んだ構造になっています。
入れ歯と大きく異なるのは、インプラントは顎の骨に人工的な歯根をしっかりと固定するという点です。本物の歯のように、顎の骨から人工歯が出ていることになるので、限りなく自分の歯に近い構造になります。
インプラントの基本構造
インプラントは、主に4つのパーツで構成されています。いわゆるインプラント体と呼ばれる人工歯根(歯根部)、上に被せる人工歯(被せもの)、その間をとりもつアバットメント(支台部)と保持スクリュー(ネジ)が一体となって、一本の歯の役割を果たします。
人工歯
保持スクリュー
アパットメント
インプラント体
インプラントの各ブロックは、一部の例外はありますが、それぞれが独立しています。ですから、仮に大きな負荷がかかって人工歯が欠けてしまったり、支台部が折れてしまっても、その部分のみ交換すればよいという利点があります。
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インプラント埋入前
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麻酔下で専用ドリルを 使用してインプラント体 が適合する穴を顎の骨に形成し、インプラント体を埋入します
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骨がしっかりとインプラントを保持し、約2~3ヶ月かけて骨が成長しインプラントに結合します
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治療終了後、インプラントにアパットメント(支台)を挿入します。アパットメント に人工歯がしっかりと連結されます。
インプラントの素材・治療の流れについて
●インプラントの素材
インプラントは長期間体内に入れるものなので、安全性を第一に選んでいます。
本体は、生体適合性に優れ、細胞組織との親和性も良い“純チタン”を使用しています。また、チタンは金属アレルギーを発症する可能性も極めて低いので安心です。
クラウンは、歯根膜(緩衝材)のないインプラントに合わせて製作しなければなりません。審美性・機能性を考慮し、近年は二ケイ酸リチウムやジルコニアなどの材料を中心に製作しています。
ケース別のインプラント治療について
●歯が1本だけ欠損している場合
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① 歯が一本欠損した状態
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② インプラントが骨の中で治癒した状態
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③ 人工歯で修復された状態
歯を一本喪失した場合の歯と歯の間開はインプラントとアバットメント(支台)によって回復することができます。そうすることによって、隣の健康な歯を削って支えにする(ブリッジ)必要がありません。インプラント治療は従来の方法に比べて審美的に良好な解決策です。最新のセラミック材料を使用することにより、さらに自然の歯に近づけることができます。
●複数の歯が欠損した場合
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① 複数歯の欠損例(欠損空隙)
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② 2本のインプラントがあこの骨の中で治癒した状態
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③ インプラント2本でサポートされた3ユニットブリッジ
複数の歯を失って大小様々な欠損空隙がある場合もインプラントによって修復できます。その場合、インプラントとアバットメント(支台)による固定性修復が第ー選択肢となります。同じ側の歯列で奥の歯から数本欠損している場合、固定性の修復にはインプラントが最良かつ唯一の選択です。
インプラントでは部分入れ歯特有のクラスプと呼ばれる鈎状の維持部が無い ため、審美性にすぐれています。
●歯が全て欠損した場合(オールオン4)
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① 歯をすべて失った下顎
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② 下顎に埋入された4本のインプラントが治癒した状態
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テレスコープ(円錐状の二墜冠)クラウンに連結される義歯
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バーアタッチメントに固定された義歯
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ボールアタッチメントに固定された義歯
もしすぺての歯を失ったとしても、総入れ歯しか選択肢がないというわけではありません。
インプラントという選択も可能です。上顎も、下顎も固定式または着脱式のインプラント修復が検討できます。
入れ歯を装着している多くの人たちは、入れ歯が不安定だとか、一部分が強く当たって痛いとか不満をもらすことがあります。入れ歯に接着剤を使用したり、補助的な固定器具を使っても長期に渡って満足のいく解決にはなりません。このような場合でも状況や要求に応じたインプラント治療が可能です。
入れ歯の装着感は埋入するインプラントの数が多いほど良好ですし、顎骨に埋入されたインプラントに直接補綴物が装着される固定式が最良となります。
インプラントの治療の痛みについて
インプラントの手術は、骨を削ったり、異物を骨の中に埋め込んだりというイメージから、痛みが強い治療だと思われがちですが、実際は想像よりもずっと痛くないものなのです。患者さんによっては、あまりにも呆気なく終わってしまい、「えっ、もう終わってしまったんですか」と驚かれることも少なくありません。インプラント埋入手術にともなう痛みの程度、腫れやその継続期間は、個人差はありますが親知らずの抜歯と同程度と考えておけばよいでしょう。
入れ歯、ブリッジとインプラントの比較
欠損してしまった歯を補うには、インプラントを含めて3つの方法があります。
1つは取り外し可能な入れ歯、もう1つは歯のない部分を両サイドの歯を削って、3本つながったワンピースの固定式の歯を入れるブリッジです。
●入れ歯について
入れ歯は特に大きな手術が不要というメリットがある反面、デメリットも多く、現在では入れ歯を敬遠する患者さんが増えています。
- 見た目がよくなく、取り外して清掃しなければいけない
- バネで前後の歯に固定するので、取り外しの際に固定源歯に負担をかけてしまう
- バネと歯の間に汚れが付着しやすいので、前後の歯が悪くなりやすい
- 食べるときに違和感があり、噛みにくい
(天然の歯に比べると、入れ歯は噛む力が5分の1から10分の1程度だと言われています)
●ブリッジについて
インプラントに比べてコスト的な面では優れています。しかし、見えない奥歯であっても、3本つながった銀色の被せものの歯が入ると、見た目の美しさが大きく損なわれます。それ以外にもいくつかのデメリットがあります。
- 前後の歯にかかる負担が5割増しになる
- 歯同士がつながっているので掃除がしにくくなる結果、前後の歯にトラブルが起こる確率が高い
- 前後の歯を削って被せることで、被せた歯が二次的な虫歯になったり、冷たい水などに沁みたりしやすくなる
その点、インプラントは他の健康的な歯を削ることは一切なく、前後の歯に負担をかけずに、噛み合わせの荷重がなくなった部分だけで補えます。つまり、元の健康な状態にもっとも近い治療法というのがインプラントなのです。ひと昔前にくらべると、ブリッジ3本とインプラント1本の価格差も小さくなったことも、インプラントの人気を後押ししています。